公告の方法について、そこまで真剣に考えずに、何となく一般的に落ちている(ダウンロード)できるテンプレートを使って起業している、という経営者は多いのでは無いでしょうか?
そして、それがそのままの場合も。
今回はIPO準備企業において、公告の方法を日刊新聞紙にしておくのが一番良いよ、という話をします。
(なお、一部の手続き手間暇考えなければ電子公告の方が安いのは確かです。後述します。)
公告とは
とりあえず基本的な所を簡単に。
株式会社は、会社法によって公告(広告じゃないですよ。”公”です。)を行う義務があります。
(怠ると100万円いかの過料が科される場合がある。とされているが、現実問題として決算公告を怠ったことにより過料を科された、という事例が無いため、ほとんどの会社がこの義務を守っていない。最低限必要な決定公告、決算公告をしぶしぶやっているのが現実。)
この公告は、会社から各種の利害関係者に各種の情報や決定について公に告知することです。
そして、その公告の方法は会社法によって定めがあります。
下記の通り、官報、日刊紙、電子公告のいずれかの方法を選択する必要があります。
(会社の公告方法)
第九百三十九条
会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
一 官報に掲載する方法
二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
三 電子公告
さて、この公告ですが、決算公告と決定公告の2種類があります。
決算公告は毎期、総会後に遅滞なく実施する必要があるのですが、上述かっこ書きの通り、ほとんど守っている会社はありません。
減資や吸収合併などのイベントがある時に、しぶしぶ行われるのが実態で、極力手間暇を削りたいと考える経営者や管理部門担当者は多いです。
公告方法は日刊紙が良い
さて、IPO準備企業(ベンチャー企業もですね)にとっては日刊紙を選択するのが一番良い、と私は考えています。
何故ならば、一番手間暇が少ないからです。
単純に決算公告を出すだけの会社ならば、電子公告の方が実際コストは安いですし、そもそも出さなくとも、現実的な損害がまずありません(という事を声を大にして言ってはいけないんですけれどね)。
ただ、急成長中の企業にとっては、増資に関連する減資(エクイティ調達後の減資)やM&Aに関連して吸収合併などのイベントが比較的多く発生するのが現実です。
この場合に、手続き的に必須になってくるのがダブル公告です。
減資や吸収合併等を行う場合、経済的な影響度が大きいという理由で(本当に大きいのかどうかは問題ではなく)、債権者の利益をほごするために、会社法上「債権者保護手続き」を行う事が求められています。
方法として個別催告(債権者一人一人に減資や吸収合併等の事実を通告する)があるのですが、じゃあ、どこまでの債権者に送らなければいけないのか、全員なのか影響度が大きい所なのか等々、非常にあいまいな部分の存在や厳密にやろうとした時の無意味な事務作業が発生します。
そこでこの債権者保護手続きを簡素化する方法があり、これがダブル公告です。
定款に定める公告方法の他に、官報公告を行う事により、この格別催告を省略できます。
ここで意外に勘違いしている方が多いのですが、公告方法を官報に指定しておくと、このダブル公告が機能しません。
官報公告に加え、定款に定める方法により公告することにより、債権者保護手続きの個別催告を省略できる、とされているからです。
というわけで、公告方法の選択肢として、官報がまず消えます。
次に電子公告です。
電子公告は会社のウェブサイト等に掲載するだけで事足りるので、決算公告を出す場合には非常に便利です。
PDF形式の決算書をDLできるような形でおいておけば、それでフィニッシュだからです。
(ただし、貸借対照表の要旨ではなくすべてを、5年間掲載する必要がある。)
しかし、吸収合併等の手続きを行う場合には別の問題が発生します。
それは登記を行う際に、添付書類として「公告をしたことを証する書面」が必要となる点です。
この書面は、調査会社なるものに、自社が決定公告を出している事に関して調査をしてもらい、証明書の発行をお願いする形で入手できるのですが、数万円から十数万円以上の費用がかかります。
そして、その依頼手続き等を熟知している管理担当者はそこまで世の中に存在せず、手続きが発生する度に大慌てになるのが現実です。
電子公告調査機関:電子公告は紙面による公告と異なり、改ざん等が容易ですし、またサーバーダウンのリスクなど必ずしも安定的に掲載し続ける事ができるとは限りません。
そのため、電子公告が適法に行われたか否かについて客観的な証明として、第三者の調査機関の調査を受ける必要があります。
正直、あまり意味があるとは思えませんし、無駄にお金がかかるのですが、法律で求められているので、必要なのです。
よくわからんイベント(合併、会社分割、資本減少、準備減少等)は会社として無いよ、というようならば電子公告で良いのですが、急成長企業にありがちな各種のイベントがあるようならば、結局お金がかかるのなら、手間暇が極力少ない手続きの方が良いに決まっています。
その点、日刊紙(日経新聞でも日刊工業新聞でも)+官報という形ならば、出す先が違うだけで、手続きとしては同じ公告掲載依頼です。
また、公告は手続き経験がある管理担当者も多いので、スムーズな場合が多いです。
大多数の会社にとっては電子公告+官報方式が一番、費用面ではお安いのは確かなのですが、時間的にも人的にもリソースの限られているIPO準備企業(ベンチャー企業も)にとっては、手間暇が少ない方法が結局一番リーズナブルなはずです。
というわけで、総合的に考えると公告の方法は日刊紙が一番良い、となります。
個人的には日刊工業新聞とかが良いですね。
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