今回は、「サブスクリプションの管理会計~演習問題~」の解答および解説になります。
演習問題はこちらになります。
解答解説①
「サブスクリプション・ビジネス」の理解について、最も正確で無いものを1つ選択してください。
- サブスクリプションとは、定期購入の意味である
- サブスクリプションビジネスにおいて、顧客の体験価値を高める事は重要である
- 良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する
- 企業にとって、毎月の費用がわかりやすく、また変動費化できる点もBtoBサブスクリプションサービス導入の動機になっている
- 正確で無いものは一つもない
正解は「3.良い製品を作りさえすれば、サブスクリプションビジネスは成功する」です。
良い製品でなければ成功確度が下がるのは確かですが、良い製品であれば成功するか?と考えれば、別にサブスクリプション・ビジネスに限らす、そうではない事がわかります。
サブスクリプション・ビジネスにおいて、最も大事なのは「顧客の成功:カスタマーサクセス」を通じた顧客との関係性構築にあります。
そのため、良い製品であることは前提としつつ、カスタマーサクセスにつながる様々な活動(オンボーディングやサポート、各種コンサルティング等)に取り組んでいく事が必要です。
別の観点で言うと、「良い製品を作れば成功する(売れる)」という考えは今の時代、大前提として非常に危険です。
この発想(プロダクト・アウトの発想)により、日本企業の多くが諸外国に追い抜かれ、現状、遅れをとっている状況に陥っています。
解答解説②
「THE MODEL」の理解について、最も正確なものを1つ選択してください。
- THE MODELはどのようなサブスクリプションビジネスにおいても適用できる万能性の高い手法である
- THE MODELロールにおいては、各部署が自部署KPIの最大化を図れば、ビジネスは成功する
- カスタマーサクセスの至上目的は解約率(チャーンレート)を下げる事である
- マーケティングは、大量にリードを確保し、次工程に渡す事が重要である
- 正確な理解は一つもない
正解は「5.正確な理解は一つもない」です。
THE MODELロールは、主にSMB(スモールビジネス)において有効性の高い、また再現性の高い手法です。
つまりエンタープライズ(大企業)向けサービスにおいては適合性が大きく下がります。
また、サブスクリプション・ビジネスと一口に言っても様々なサービスが存在しており、例えSMB向けであったとしても、一様にTHE MODELロールが通用するとは限りません。
あくまでも、自社にとって最適な手法にカスタマイズ、模索することが必要です。
自部署KPIの追求はある側面において重要ではありますが、それだけではいけません。
質の悪いリードを大量に渡されてもセールス部門は困りますね。
部分最適化に陥らないよう、あくまでも全社単位での最適化、KPIの最適化が必要です。
カスタマーサクセスの至上目的はカスタマーサクセスです(まぁ、人によって考え方は違うかもですが)。
解約率(チャーンレート)の低減は、詰まる所、カスタマーサクセスの結果として生じる現象です。
チャーンレート低減は重要ですが、ここは決して目的ではありません。
上述した通り、質の悪いリードを大量に渡されてもセールス部門は困ります。
質の良いリード(商談設定率や契約確度の高いリード、さらに言うと長期的に取引してくれそうなリード)を確保し、次工程に渡していく事が求められます。
もっとも上流工程にいるため、全体感を持って、全体施策の最適化を行う役目も一側面としてはあります。
解答解説③
MRRの定義は?正しいものを1つ選択してください。
- 年間定額収益
- 月間定額収益
- 平均顧客単価
- 顧客生涯収益
- どれも正しくない
正解は、「2.月間定額収益」ですね。
MRRはMonthly Recurring Revenue:月次収益,月間定額収益の略です。
用語略語の意味をしっかりと理解し覚えていきましょう。
解答解説④
リードを獲得するためのコスト、CPA/CPLに関係する会計科目として適切で無いものは?最も正確で無いものを1つ選択してください。
- 売上原価
- 人件費
- 広告宣伝費
- システム利用料
- 正確な勘定科目は一つもない
正解は「1.売上原価」です。
CPL(リードを確保するのに必要な費用)ですが、まず代表格としては「広告宣伝費」があります。
SNS/WEBマーケティングを中心に、雑誌や展示会等々、様々な広告手法により認知度を高めリードを確保していきます。
そして、それらの活動を行うにあたって人やシステムが必要であり「人件費」「システム利用料」といった費用がかかってきます。
売上原価は、実際に成約(契約)がとれた後、実際にサービスを提供していく段階になって計上されていく費用科目ですね。
解答解説⑤
Payback Periodsの理解について、正しいものを選んで下さい。
- 大きい方が良い
- 小さい方が良い
- 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない
正解は「2.小さい方が良い」です。
Payback PeriodsはCACを回収できるまでに必要な期間です。
当たり前ですが、コストをかければかけるほど顧客を獲得するのが容易となり、またかけたコスト(投資)の回収は困難になります。
つまり、Payback Periodが短ければ短いほど、投資回収は容易である事、逆に長ければ長いほど困難になります。
解答解説⑥
Churn Rateの理解について、正しく無いものを1つ選択してください。
- 初期導入のお手伝い(オンボーディングやトレーニング)は重要なアクションである
- 旧来のコールセンター(カスタマーサポート)も、チャーンレート低減のための重要な役割である
- チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする
- チャーンレートは0以下にできる
- 正しく無いものは一つもない
正解は「3.チャーンレートを下げるために、契約やサービス画面の設計で、解約し辛いものにする」です。
大前提として。
もし、「チャーンレートを下げるために、解約し辛いようにしてしまおう!」という発想をしているのであれば、早々にその考えを改めた方が良いでしょう。
自分自身の事を考えてみればわかると思うのですが、もう解約したい、というサービスがあったとして、どうやったら解約できるのか、サービスの管理画面やHPを見てもよくわからない。
わかったとしても、その方法がコールセンター(しかも、平日日中しか受け付けていない)への架電での依頼だとしたら、非常に面倒でイライラしませんか?
酷い場合だと、解約専用の電話番号が海外で、言葉がうまく通じず、一向に解約できない、というサービスも存在します。
普通に考えたら、このような目にあったら、そのもう解約しようとしているサービスに対して、憎悪の念を抱く、とわかるはずです。
解約し辛いようにする、という発想は非常に浅ましいものなので、早々に改めましょう。
なお、チャーンレートの中でのネット・チャーンは0以下にすることができ、この状況を「ネガティブ・チャーン」と言います。
KPI解説も参考にしてください。
解答解説⑦
LTV/CAC(ユニットエコノミクス)の理解について、正しいものを選んで下さい。
- 大きい方が良い
- 小さい方が良い
- 数字の適切な目安はものにより異なるので、良い悪いはない
正解は「1.大きい方が良い」です。
ユニットエコノミクスは事業の経済性(収益性)を経済ユニット単位で示したものです。
まず、LTVは、一顧客が、取引期間を通じて企業にもたらす利益の総額でしたね。
そのため大きければ大きい方が良く、またCACはようはコストなので小さければ小さい方が良いです。
つまり、LTV/CACは大きければ大きい方が良い、という事になります。
数値の目安としては、経験則でしか無いのですが、「ユニットエコノミクス > 3」が望ましいとされています。
演習問題の⑧と⑨は自由回答方式なので、別に明確な答えが存在するものではありません。
(そのため、解説的なものは省略します。)
ポイント的なものをあえて解説するのならば、「自社のビジネスを良くするために、どうしていくか?」という、視点が必要、という事です。
日々忙しいと目の前のタスクに埋もれがちです。
日々のタスクは重要ではあるのですが、こういう何かを考えるタイミングでは、もっとマクロ的な視点で「どうあるべきか?」を考え、テキストとしてまとめるのが良いでしょう。
最終的にタスクに落とし込む段階では「どうあるべきか?(何をやるべきか?)」「自分達(もしくは自分自身個人)がやれることは何か?」「自分達(もしくは自分自身個人)がやりたいことは何か?」が極力重なっている領域にフォーカスしていくことが重要です。
自社の課題を整理した上で、マクロ的にどうしていけばよいか?につなげ、最終的に個人レベルのタスクに落とし込めれば、この種の演習としては満点と言えるでしょう。
演習問題⑧
自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、あなたがTHE MODELにおける一連のKPIを「最適化」に取り組むとしたら、どのような事に取り組みますか?(自由回答方式)
演習問題⑨
自社のビジネス(サブスクリプション系と想定する)において、カスタマーサクセスの観点で問題だと思う事は何ですか?(自由回答方式)
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