オンキョーは復活するか?

経営企画

オーディオ機器の大手、オンキョー㈱が苦境に陥っています。
2020年3月期決算においては98億円の最終赤字を出し、債務超過に転落。
2021年3月期第1四半期(6月末)もコロナ影響もあり赤字の状態です。
組織再編も行われていますが、果たしてオンキョーは復活するのでしょうか?

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オンキョー㈱の業績

まずは業績ですね。

直近業績概要

こちらは2021年3月期第1四半期の業績です。

オンキョー㈱四半期報告書より

売上高は昨対比▲73%の激減、赤字幅は一定の構造改革が行われているのか昨年水準の13億円の赤字となっています。

2020年3月期の段階で98億円の最終赤字と、35億円の債務超過、自己資本比率▲35%という状況でしたが、この第1四半期で増資が行われており、自己資本は一定の回復が行われています。

同四半期報告書より

なお、オンキョー㈱の株価は下記の通り推移しており、増強できている資本も全体感からすると微々たるものです。

更なる資本状況が必須と言えるでしょう。

Google オンキョー㈱株価推移

業績推移

業績推移ですが、下記の通り7期連続の経常損失となっていました。

オンキョー㈱有価証券報告書より
オンキョー㈱有価証券報告書より

このような状況ですので、オンキョー㈱は2015年3月期より後、19回もの増資を行っています(新株予約権は除いてで19回です)。

株主もパイオニア㈱の3.95%を筆頭に、後は薄い持株数となっており、特定の大株主がいない状況です。

こういう状況ですので、借入金をはじめ、各種債務に担保がついている状態です。
(財務制限条項は外れている様子です。)

同有価証券報告書より

当然ですが、ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)がついています。

(継続企業の前提に関する事項)
当社グループは、2013年度より経常損失が継続しており、当連結会計年度においても5,668百万円の経常損失を計上しております。また、取引先に対する営業債務の支払遅延が当連結会計年度末現在で6,468百万円(前連結会計年度末3,874百万円)存在していることに加え、当連結会計年度に親会社株主に帰属する当期純損失を9,880百万円計上した結果、当連結会計年度末現在において3,355百万円の債務超過となっていることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

ようは、どこかの会社に買われるか、倒産をしたとしてもおかしくない、非常に厳しい状況だ、という事です。

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果たして復活できるのか?

それでは、オンキョーは果たして復活ができるのでしょうか?

事業セグメント別の業績

こちらはセグメント利益2期分です。
上述の業績推移で見てわかる通り、売上高が年々減少していっている中で、直近の新型コロナウイルス感染拡大影響による業績ダメージが来ている、結果として全ての事業セグメントにおいて赤字が発生した、という着地になっています。

同有価証券報告書より

資料提示は省略しますが、デジタルライフ事業およびOEM事業は、過去からいままで数字がふるわず、赤字か、黒字が出たとしても微々たる数字で推移していました。
AV事業で何とか数字を作っていた状況だったようです。

なお、売却報道のあったAV事業ですが、諸々条件がすり合わなかったようで、方針転換がおこなれた模様です。
この点、オンキョーは「大幅に固定費の削減が実現したことにより」としています。

(参考)セグメントの説明

AV事業:オーディオ・ビジュアル関連製品

デジタルライフ事業:電話機、ヘッドホン関連製品、音楽配信等のコンテンツ、食事トレーニングアプリ

OEM事業:車載用スピーカー、家電用スピーカー、スピーカー部品、アンプ等オーディオ製品、オーディオ・パソコン製品等のカスタマーサポート及び修理

他社(ケンウッド)の業績は?

オーディオ系メーカーですと、ケンウッドがあげられるので、こちらの業績も見てみましょう。

㈱JVCケンウッド有価証券報告書より

ケンウッドも新型コロナウイルス感染拡大の影響をうけて業績が悪化しているのですが、それでも利益は出ています。

(参考)セグメントの説明

オートモーティブ分野:カーAVシステム、カーナビゲーションシステム、ドライブレコーダー、車載用デバイス

パブリックサービス分野:業務用無線機器、業務用映像監視機器、業務用オーディオ機器、医用画像表示モニター

メディアサービス分野:業務用ビデオカメラ、プロジェクター、ヘッドホン、民生用ビデオカメラ、ホームオーディオ、オーディオ・ビデオソフト等のコンテンツ、CD/DVD(パッケージソフト)等の受託ビジネス

ケンウッドの特徴ですが、オンキョーが事実上オーディオ一本で経営を行っているのに対し、ケンウッドは他分野にも手を出している点にあります。

堅く利益を出せる業務用機器等もそうなのですが、特にカー領域に主力事業を振った点が指摘できます。
(ケンウッドがカー領域に進出をしたのは1980年。2000年代初頭の経営危機を乗り越えて、本業転換に成功している。)

個人用のAV機器は、スマートフォンの普及等を背景に、世界的に消費が減少、ないしは伸びが停滞しています。
この点はオンキョーも言及しており「全世界的なホームオーディオ市場の縮小や、主力事業のAVレシーバーの全世界的な低迷に加え」と業績について解説しています。

AV機器は、安くてもセットで10万円前後するものが珍しくなく、高いものだと数十万円、数百万円するものもあります。
若い方達が買うわけ無いですよね。
更に、世界的に晩婚化や、都市部での集合住宅での生活が主流となり、音を出すという事自体が憚られる生活環境、居住環境になっている事も指摘できます。

ようは、ケンウッドを見てわかるように、オーディオ一本だと、もう厳しいよね、という事です。

オーディオ産業におけるオンキョーの存在感って薄いよね

AV事業はまだまだニーズがあるもののこれからジリ貧、カー領域はケンウッドが強い、OEM事業は利益が弱い、と非常に厳しい状況です。

それではAV事業(個人向けのデジタルライフ事業含め)はどうなのか?という所ですが。
そもそもAV事業は、競合他社も非常に強いです。
もっと言うと、オンキョーの存在感って非常に薄いという印象を持っています。

こちらは価格ドットコムで検索したスピーカーのメーカー一覧(の一部)です。

これだけのメーカーがあって、他社は数十のスピーカーを出しているのに対してONKYOは14本だけです。

スピーカーだけではありません。
アンプも、ヘッドホンも、イヤホンも、似たような状況です。

肝心要のはずのAV事業ですが、製品力が他社に劣っているのです。

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復活に必要なこと

オンキョー自体がこれからやろうとしている事は、リンク先資料「グループ再編 短期・中期・長期の視点で復活を」に記載があります。

これ自体はもう、頑張ってください、としか言いようが無いのですが、一つ気になる記事を見つけました。

日本勢は「測定結果にこだわる」とか「重ければいい音」だというオカルトな迷信に束縛されているという面があります。測定結果というのは、スピーカーから出た音をわざわざ再びマイクで拾って、その「周波数特性」をグラフにしたものです。
(中略)
全体的にまっすぐに満遍なく再生できるのが「特上」だとされます。これが日本式の信仰です。
実は、この発想法は全く無意味なのです。
(中略)
日本のオーディオ産業は、基本サラリーマン集団であって、クラフトマンシップの集団ではありませんから、「検査結果が良ければ高級」というオカルト信仰でやってきたのです。ですが、それは世界に通用しないので、日本のオーディオマニアが高齢化すると、もう市場は消滅ということになりました。
(中略)
厳しい要求を満たすように製品のクオリティを正しい方向に向けていれば、こんなことにはならなかったと思います。
(中略)
そのためには、数千ドルから数万ドルは投じてもいいというお客もまだまだ沢山存在しています。こうした市場を、結局のところ日本勢は抑えることができませんでした。

MAG2News「ついにオンキヨーも身売り。なぜ日本のオーディオ産業は傾いたか」より

これは外部記事の、とある記者の見解になるのですが、なるほど、とうなづける部分があります。

当該記事の記者は、「世界の若者のニーズをつかめないということがあります。若い人が入ってこない、海外駐在しても現地のディープな若者カルチャーにリーチできないなどの要因が重なっていると思います。」とも言っています。

本当に一例なのですが、最近のオーディオのトレンドとしてBluetoothイヤホンがあげられます。

世界の完全ワイヤレス・ヒアラブルの販売数量(単位:百万台):「完全ワイヤレス・ヒアラブル販売数量、2020年に世界で1.29億台に」より

Bluetoothイヤホンは、2018年は4千6百万台の販売台数でしたが、これが2020年には1億2千9百万台に販売数量が伸びるとの事。

世界のシェアの1%でも取れば、売上高が倍近くになる物量です(2020年3月期ベース:1台20,000円のハイレンジ想定)。

しかし、世間からのオンキョー製品の評価としては、評価対象にかすりもしない状況です。

同上

私は結論として、オンキョーの復活に必要な事に、シンプルに「世の中のトレンドは何か?」「お客様が何を求めているのか?」の追求があると考えています。

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