収入印紙/印紙税を廃止すべき理由

経営企画

河野大臣が収入印紙/印紙税にもメスを入れるようです。
今回は、この制度に関して、廃止すべき理由を解説していきます。

なお、印紙税云々に関しては、各所でいくらでも触れられているので、ここでは解説しません。
興味がある方は国税庁のHPでも見て下さい。

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収入印紙/印紙税に遂にメスが

まず報道を見てみましょう。

河野規制改革担当相の直轄チームが、国に納付する各種の税や保険料などの手続きについて、その利便性の向上を図るため、各省庁への実態調査を始めたことがわかった。
この中で、収入印紙に関しては、「印紙を使っている理由」や「印紙による納付を廃止した場合の支障」などの回答を求める書面が配布され、その使われ方の見直しが検討されることになる。

FNNプライムオンライン「【独自】次は「収入印紙」 河野大臣が見直しへ」より

(主に政府への)反対派の方からは「改革ごっこ」と揶揄する声が出ていますが、ビジネス・サイドの方々からは歓迎の声が圧倒的多数のようです。

なお、印紙税には、偽装領収書や虚偽契約書の抑制効果も一応あるにはあります。
(高額取引の契約書を作成すると、数万円の印紙税が必要となる場合があり、これがあると偽装契約書を作ろう、というインセンティブが抑制されるであろう、という発想。)
ただ、悪さをする人間は、何をどうしても悪さをするものですので、あまり意味が無いと言っても過言では無いでしょう(実際、印紙税が無い国も多い)。

さて、印紙税を廃止すべき理由は次の通りです。

  • 課税根拠が無い
  • 公平な租税と言えない
  • リモートワーク阻害の要因
  • 社会的な無駄なコストの存在(振込手数料とか)
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課税根拠が無い

まず、課税根拠からです、

政府の税制調査会からは次のような答弁が出ています。

契約書や領収書などの文書が作成される場合、その背後には、取引に伴って生じる何らかの経済的利益があるものと考えられます。
また、経済取引について文書を作成するということは、取引の当事者間において取引事実が明確となり法律関係が安定化されるという面もあります。

印紙税は、このような点に着目し、文書の作成行為の背後に担税力を見出して課税している税と言うことができます。

ようは、わざわざ契約書を取り交わして取引をするという事は、それだけ税負担をするだけの能力があるよね、という事です。
(もうちょっと固く書くと、契約書や領収書の裏には必ず取引があって、そこから生じる経済的利益にフォーカスし、税負担を求める、という事です。)

この税負担の能力、支払能力の事を「担税力」と言います。

印紙税は、この担税力を課税根拠としているのです。

ここにツッコミどころがあります。

わざわざ契約書を取り交わして取引したのであれば、その取引により売上ないしは費用が計上されます。
つまり、契約者たちの所得や課税取引に反映され、消費税や法人税などの形で課税されるはずです。

契約行為の背景にある経済的利益、つまり担税力に課税され、さらに契約行為によって発生した諸々にも課税される。

全くもって意味不明です(二重課税)。

さらに契約書や領収書には印紙を貼り付けて消印を付し、はじめて納付した事になります。
買っただけではダメで、貼り忘れると過怠税(3倍)が科されます。
印紙と契約書が法的に紐づくわけでは無いのに、非常に意味不明です。

なお、金融取引などに対しては課税のポイントが無いため、融資の契約書に印紙税が科されるのは、まぁ合理的と言えば合理的と言えます。
ただ、それなら別の形で補完する方法があるはずなので、印紙税である必然性がありません。

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公平な租税と言えない

この印紙税ですが、電子データには課されません。

つまり、電子契約書、電子領収書なら、収入印紙を貼る必要が無いのです。

上述の通り、公式には印紙税の課税根拠は担税力にあるとされているのですが、紙だろうが電子だろうが、担税力に変わりはありません。
しかし、紙には課され、電子には課されない。

不公平だと思いませんか?

印紙税の担税力という観点では双方同一なのに、適切に機能していないため、公平な租税とはとてもではありませんが、言えません。

リモートワーク阻害の要因

toC向けのビジネスの場合、領収書に貼り付ける印紙は後納(申告の上、納付)が可能ですし一般的ですが、通常の契約書とかでは別です。

実際に現物の印紙を購入し、現物の紙の契約書に貼り付けて消印を押す(ボールペンで斜線を引くとかでも良いんですけれどね)必要があります。

つまり、リアルな現物を介在するが故に、リモートワーク阻害の要因になっているのです。

世相にあっていませんね。

社会的な無駄なコストの存在(振込手数料とか)

さて皆さん、銀行の振込手数料。
金額によってお値段が高くなるの、なぜだか考えた事、ありますでしょうか?

こんなやつです。

これ、印紙税分の費用が消費者に転嫁されているんです。

ATMから、「ご利用明細」がペロっと出てくると思いますが、右下の方にこういうのが印刷されています。
これが印紙部分なんですね。
(そのため、WEBオンリーの新興銀行では振込手数料が安い。紙が出ないからです。)

つまり、このような地味な部分にも印紙税が登場し、消費者負担が発生しているのです。
(さらに百貨店等々で高額買い物した時にも印紙税が発生しており、結果として消費者負担が乗っている。)

もう、別の形で税負担すれば良いのだから、こんなめんどくさい事やめればいいじゃん、って素直に思いませんか?

手間暇もそうですし、無駄な費用もかかるしで、社会にとって良い事のようには思えません。

ちなみに、「アレ?支払手数料は(消費税が)課税されるけれど、印紙税って課税対象じゃないよね?」と思った方は、税金に詳しい方ですね。
これは、別に消費者に直接印紙税を負担してもらっているのではなく、支払手数料という形で間接的に負担してもらっているのです(納付主体は銀行になり、そもそもとして消費者に直接請求する事はできない)。
つまり、印紙税に相当する部分を支払手数料に上乗せして帳尻あわせをしているんですね。


以上、印紙税を廃止すべき理由を解説しました。

なお、印紙税の大元、原点は「戦費調達」です(元々はオランダ。日本でも戦前、堂々と軍事増強のための税徴収、と言われていた)。
主に、印紙税にメスを入れる事に揶揄をしている方々は、諸々思想的に、その種のワードとか分野がお嫌いのはずなので、どちらかというと諸手をあげて賛成するはずなのですが。さて。

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