日本経済が伸び悩む中、持ち家に対する意識も大きく変化し、「持ち家信仰」は過去のものとなりつつあります。
そんな中、いくつか持ち家に対するニーズの変化の兆しがありました。
アフターコロナの世界における持ち家ニーズは、どのような変化が見られるのでしょうか?
持ち家信仰が再び復活するという言説
先日、「新型コロナウイルスの常識破壊【持ち家信仰の復活】」と題する記事を見かけました。
内容としては、蓄えが無いが故に家賃を払い続けなければいけない状況はリスクであり、家賃を払わなくてもよい持ち家を良いと思う人が増えるかもしれないね、というものです。
詳細はリンク先記事を読んでください。
この意見自体は、結局ローンを払わなければいけないのならば、ローンが残っている間は結局高リスクだよね、という意味で微妙なのですが(この点は記事執筆者も指摘している)、一部そうなのかもしれないな、と思う点がありました。
それはリモートワークにおいて、一日中、過ごしづらい家にいることのストレスです。
日中のほとんどを外で過ごしているからこその日本住宅
日本の住宅は狭い
まず言えることですが、日本の住宅は狭いです。
次の2つの図を見て下さい。
日本の住宅、特に借家は国際比較で見た時に明らかに狭く、欧米の2分の1~3分の1ほどです。
一人当たり換算でも狭く、関東大都市圏の借家の狭さが際立ちます。
国土交通省が示している、健康で文化的な住生活を送るために必要不可欠な面積が、単身者で25㎡、ゆたかなせいかつを送るための目安では40㎡となっており、これを正とするならば、かなり狭いと言わざるを得ません。
この狭さは、日中のほとんどを外で過ごしており、自宅はほぼ寝るだけの用途となっているからこそ成り立つものの可能性があります。
リモートワークがこれからも継続するならば、日本の住宅事情は、主に借家住まいの方を中心にストレスの原因になっていきます。
特に単身者にとってはキツイでしょう。
単身者向け住宅は伸びるかもしれない
そこから考えられるのが、単身者向けの「持ち家」です。
郊外の小規模戸建てや、都心立地でも1LDKあたりのマンションなどのニーズが高まる可能性があります。
金額も2,000万円~位の値段ならば、比較的ハードルも低くローンも組めるはずで、一定程度稼いでいる単身者向けに、中古のリノベーション・マンションなどが伸びてもおかしくはありません。
空き家問題が深刻になりつつある地方でも、リモートワーカー向けにリノベーションして販売する、ということをトライしてみる価値はあるでしょう。
住宅設計におけるポイントは下記です。
- (感染症対策に)空気清浄機能や湿度調整機能などを標準で装備
- (巣ごもり向けに)一日過ごしていてストレスが少ない設計
- (WEB会議向けに)Zoom映え
変化に応じてチャンスも生まれる
日本という国の全体感から考えると、これからも持ち家信仰そのものは崩れていくのは続くでしょう。
今回の新型コロナウイルスの影響は、不動産業界にとっても喜ばしいことで決してないはずです。
ただ、長期的目線にたった時に、新しいニーズが生まれるであろうことも確かであるはずです。
この変化に応じたチャンスを如何につかむか。
リモートワークの浸透をはじめとした変化は、空き家問題が深刻化していくことが間違いない日本の不動産業界の一つの活路になるのでは、と考えました。
(補足)空き家率の推移と予測について
空き家問題に関しては、リンク先の野村総合研究所の資料が参考になりました。
なお、直近実績は当初予測を下回っているようです。
住宅供給のコントロールや空き家活用がうまくまわれば、空き家問題は言うほどの影響を及ぼさない可能性があります。
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