経営危機のリーダー~非常時・緊急時のリーダーシップのあり方~

マネジメント・リーダーシップ

今回の新型ウイルスが引き起こしたパニックは、実際の科学的な脅威度を超えて、世界中で猛威を振るっています。
景気停滞による経済危機です。
すでに倒産の報をいくつもきくこの状況、リーダーはどのように振る舞うべきでしょうか?

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リーダーシップとは

書店のビジネス書コーナーをのぞけば、必ず陳列されているテーマがあります。
それは「リーダーシップ」です。

リーダーシップ論は古代ギリシャの時代から語られている歴史の長いテーマです。
ビジネスの現場に限らず、人間が2人以上集まって何かをしようと思ったとき、自覚・無自覚関わらず、リーダーシップは避けて通れない話だからです。
また、時代やその時々の状況によっても捉え方やその姿が変わるものです。
孫子はリーダーシップを「智信仁勇厳をそなえること」、「戦争論」のクラウゼヴィッツは「知性と情熱を兼ねる高度な精神を持つこと」と、ドラッカーは「組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立すること」と定義づけました。
このように、歴史や人のうつろいと共に、言葉やあり方を変えながら様々に議論されてきました。

現代のリーダーシップ論では、具体的なビジネスの現場や環境変化に対応する「適材適所」という観点でのリーダーシップが研究されています。
ようは「時代や状況の変化への対応力」としてのリーダーシップです。

そしてその「状況の変化」の一つが非常時に会社が経営危機に陥った時のリーダーシップで、今回はこの「経営危機のリーダー」がテーマです。

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コロナ関連の倒産が急増している、今は平時ではなく戦時である

TDBが公表している下記の資料の通り、すでに倒産の報を出している企業が多数でています(3月11日現在)。

2020年3月11日13時現在で判明している新型コロナウイルスの影響を受けた倒産(法的整理または事業停止)は、全国に8件あることが判明。法的整理が5件、事業停止が3件
エリア別に見ると「近畿」が3件で最多。「北海道」「東北」「北陸」「中部」「中国」がそれぞれ1件
どのケースももともと経営難、厳しい経営環境に置かれていた共通点があり、新型コロナウイルスが追い打ちをかけ法的整理・事業停止に踏み切っている。今後は、エリア拡大や新型コロナウイルスが主要因となる倒産、連鎖倒産の発生が懸念される

TDBリリースより

これは、一部であると思われ実際はもっと多く、そして参照記事にもある通り、これからも発生していくものと思われます。
すぐには倒産とまではいかなくとも、すでに実態として経営に影響が出ている企業も多いでしょう。
私が関与する企業においても、影響がではじめており、事業計画の修正対応を検討しています。

つまり、今現在は平時ではなく戦時、非常時であり緊急時です。
リーダーシップのあり方も、これに対応して変化をつけなければいけません。

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経営危機のリーダー

特に日本においてそうなのですが、組織のトップは、大勢の意思を尊重し、異なる意見を調整するやくわり、いわゆる「調整型」のリーダーが多いという印象をうけます。
もしくは、とくに公的機関で多いお飾りとしてのトップであったり、伸びない中小企業における極端なワンマン。
こういったリーダーでも通常時、平時には問題が起きません(より正確にいうと問題が顕在化しません)。

しかしながら戦時、非常時はそうはいきません。
リアルに経営危機に陥っているか、陥るリスクがある状況では、判断を誤ればすぐに倒産してしまうからです。
経営危機の状況では、多少の摩擦も恐れず、思い切った決断と行動ができるリーダーが必要です。
自分自身の保身や既得権益の保護のためではない、危機を乗り切るための、会社にとっての「安全第一」を真にやり切れるリーダーが必要なのです。

そのようなリーダーがもつべき指針は次の5つであると考えます。

  • ミッション,ビジョンをぶらさない
  • メンバーを安心させ鼓舞する
  • 危機の最前線に立つ
  • 限られたチャンスに喰らいつく
  • 未来に向けてやれることをやる

¶ ミッション,ビジョンをぶらさない

会社は、創業者と創業メンバーが「世の中に変革を起こしたい」からこそ創業したもので、つまりミッション・ビジョンが存在します。
どのような危機にあたってもこのミッション・ビジョンはぶらしてはいけません。

「生存のため」だけに、経営の舵を切った結果として、これまで事業を支えてくれた顧客・取引先が離れてしまっては、後に何が残るでしょうか?
ミッション・ビジョンに共感をしてジョインしてくれたメンバーたちが去ってしまっては、どのようにミッション・ビジョンを達成していくのでしょうか?

ミッション・ビジョンは、会社経営における中心軸であり、同時に絶対軸です。
そもそもとして、ここをぶらしてしまっては、会社自体が存続する意義が無い、つまり危機を乗り越える必要性が無い、と考えましょう。

¶ メンバーを安心させ鼓舞する

ヤバイ、大変だ、危機だ、倒産する、そう喚くのは簡単なことです。
ただ、それではメンバーたちは不安に思わせるだけです。
リーダーはメンバーを安心させ、鼓舞するものです。

この時に必要なことは、

  • 何が起きているのかという客観的な事実の説明
  • これからどうしていくのかという明確な方針の説明
  • そしてみんなの力が必要だという真摯な助力の要請

この3つです。
何が起きているかを知れれば、メンバーは自分達で何ができるかを考えるでしょう。
会社の方針を明確に知れれば、メンバーは自分達でできることやるべきことを実行に移せるでしょう。
リーダーから誠実に助けを求められれば、一人一人が協力しあい、組織のために尽くせるでしょう。

「自分についてこい」というマッチョイムズも時には有効ですが、それ以上に、果敢にかつ誠実に、真摯に物事に向き合う姿勢が重要です。

¶ 危機の最前線に立つ

口だけ達者な、表面的に誠実なだけの人を、誰が信じるでしょうか?
経営の危機にあっては、リーダー自らが最前線に立ち、共に戦う同士であると、そうメンバーに思わせることが必要です。

人がリーダーに従う要件として、2つのことがあります。
それは、正当性と信頼感です。
この内、正当性は多くの場合与えられるものですが、信頼感は自ら勝ち得るものです。
そして危機時においては行動によってしか示せません。

ある食品メーカー、誰しもが知っているインスタント焼きそばの会社において、異物混入騒動がおきました。
初期対応のまずさもあって、商品回収、販売自粛、工場停止が何か月にも渡り続きました。
その際、社長は自らが現場に立ち、商品を回収し、取引先と顧客に謝り、メンバーたちと共に戦い続けました。
この結果として、騒動以前より信頼を得て、業績も大幅に回復する状況になりました。
これはほんの一例ですが、危機時におけるリーダーがとるべき行動の参考になるはずです。

¶ 限られたチャンスに喰らいつく

危機時は、顧客も、取引先も、メンバーたちも離れていってしまうものです。
今までできていたことができなくなり、リソースも減っていく。
絶望的な状況、とそう見えるはずです。

しかし、それだけではなく、光明がどこかにあるはずです。
経済社会において、いままで流れていたお金がとまった場合、必ずどこか別の場所に流れているか、単純に滞留しているだけのはずです。
視点を変えて、柔軟に取り組みを変える必要があります。

例えば、今回の騒動ですと、人々は外出を控え、自宅やオフィスの中での生活の比率が増えました。
そうなると、確かに今までオフラインでお店に来ていてくれた顧客は来てくれなくなります。
しかし、飲食店ならば宅配ができるはずです。
アパレルならばECの強化ができるはずです。
元々Webサービスを提供していた会社ならば急拡大のチャンスです。

社会全体を見れば、へこんだ所もあるならば、必ず伸びている所もあるはずで、そのようなチャンスがある場所を鋭敏に嗅ぎ分けるのもリーダーにとって必要なことでしょう。

¶ 未来に向けてやれることをやる

上述「限られたチャンスに喰らいつく」ともかぶりますが、危機時にはできることが限られるのが通常です。
今まで取り組めていたはずのことが、予算カットによりできなくなってしまうのです。
しかし、本当に何もできないのでしょうか?
そんなことは無いはずで、今までできていたことができなくなった分、逆にできていなかったことができるようになる可能性があります。

マーケティング部門を例に考えてみます。
マーケティング部門は予算があってなんぼの部門です。
現代社会における主流な手法であるWebマーケティング、これにはまあまあ多額な予算が必要です。
これがカットされては、地道なPR的な手法に限定されていて、そしてこれは大体のマーケッターは苦手としているものです。

では、何ができるでしょうか?
それは「過去のノウハウの再整理」です。
PDCAサイクル、というものがビジネスの現場ではよく使われますが、日々の忙しさを背景に、現実的にはPDPDサイクルになっている場合が多いでしょう。
活動が制限されるという状況は、この観点で見るとチャンスです。
今までのマーケティング活動の総整理を行い、これまでできていなかった分析に一気に取り組むのです。
そして、危機を乗り切った後のマーケティング活動に活かすのです。

このように、一度「しゃがむ」ことによって、次の「ジャンプ」への力を溜めるのです。
これは、今までできていたことができなくなったからこそ生まれた、新しい今できることです。
あくまでも未来を見据えて、今できることに取り組んで行きましょう。

まとめ

これまでのことを一言でまとめると「未来に向かって今できることを全力でやる」になります。
これが経営危機におけるリーダーシップです。

なお、本文では主に「経営者」やそれに準ずる幹部に向かって書いてきましたが、リーダーとは必ずしも「社長」や「部課長」しかなれないものではありません。
なぜならば、「役職は人から与えられるもの」ですが、「リーダーは自らなるもの」だからです。
つまり、一人一人が、誰しもがリーダーになれるのです。
(もっと言うと、人生においては「自分自身」こそが「経営者」であり「リーダー」であり、「主人公」のはず。)

状況に悲観せず冷静に捉え、行動は楽観的に果敢に。
一人一人がリーダーである組織が作れれば、必ず経営危機は乗り越えられるはずです。
そして、一人一人がリーダーである組織になるためには、やはり「経営者」自身が真のリーダーになる必要があります。

これまでも、今日も、そして明日からも、ミッション・ビジョンの達成のために、未来に向かってチャレンジしていきましょう。

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