利益相反が何でダメなのか納得~ハンコ文化とリモートワークから見る利益相反取引~

IPO・バリュエーション

日本全体でリモートワークが進められています。
しかしながら、とある物の存在により、リモートワーク推進が妨げられています。
ハンコ文化です。
そして、日本はこのハンコ文化について国家レベルの利益相反の状態にあり、改善が進まない状態にあります。
ここでは、利益相反とは何か?なんでダメなのか?を解説していきます。

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忙しい人向けまとめ

  • 取締役が自分の利益のために、会社の利益を損なう取引を行わせることを利益相反取引と言う
  • IPO推進上、証券会社や東京証券取引所の審査上、絶対に見られる領域
  • 利益相反取引を行う場合、株主総会、取締役会設置会社の場合は取締役会にて承認をとらないといけない
  • 日本のハンコ文化がリモートワークの推進を妨げている
  • IT大臣ははんこ議連の会長も兼任しており、完全な利益相反の状態にある
  • 会社のミッション・ビジョンといった本質的な所から離れてしまうため、利益相反の状態は排除しなければならない
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利益相反取引とは

利益相反取引とは~IPO推進上マスト対応~

組織の構成員が、組織と組織の構成員の利益が相反する取引を、組織に行わせることを利益相反取引と言います。
特に、株式会社においては会社法という法律で明確に規定しており、取締役が会社の利益と相反する取引を行わないよう、ガバナンスを構築することを求めています。

なお、利益相反取引はIPO推進を行う会社において、証券会社や東京証券取引所の審査上、絶対に見られる領域です。
そのため、IPOを目指すならば、対応しなければいけない必須の事項となります。

会社法の規定

会社法の規定では、次の通りとなっています。

(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条

取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 略

(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)
第三百六十五条

取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

2 取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

つまり、利益相反に該当しうる取引を行う場合には、株主総会、取締役会設置会社においては取締役会での承認が必要としています。
これにより、会社の業務を執行する取締役が、会社の利益に反して、その取締役自身や、取締役が関与する第三者の利益を図ることを防ぎます。

利益相反取引の事例

よくある典型例としては、会社が取締役に、もしくは取締役が会社に、何かしらの商品や資産を売却する場合です。
この場合、通常よりも商品や資産の売却代金を安く売却(もしくは高く買い取り)することにより、取締役の取り分(利益)が増える可能性があります。

この例では、会社-取締役の1対1の取引の図式ですが、会社-会社の場合もありえます。
例えば、会社Aのある取締役が、別の会社Bでも取締役を務めていたとしましょう。
この際に、会社Aと会社Bが取引を行う場合、この取締役にとって有利なように、会社間取引を操作する可能性が考えられます。

他には、取締役が個人的な借金をする際に、会社が保証をする場合も想定できます(間接取引)。

まず、これらが大前提です。

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リモートワーク化を妨げているもの

それでは、リモートワークの話に移ります。

現在、リモートワークの推進が国や都によって強く推奨されています。
首相により、「オフィス出勤者の最低7割削減」が求められている状況です。

しかし、このリモートワークがある存在により妨げられているのが実態です。
それは、ハンコです。

高性能低価格のノートパソコンの普及や、クラウドサービスの浸透により、リモート環境でも多くの仕事ができるようになりました。
PDFで書類をやり取りし、印刷をせずに済む状況や、紙を不要とする文化も一般的になってきました。

それでも、どうしてもハンコという物理的な存在を無くし切ることは現実的に不可能です。
電子稟議は一般化しましたが、電子契約書はあまり使われず、契約書などは未だにハンコを必要とする商習慣になっています。
(自社が電子契約を導入しても、先方が同意しなければ成立しない。)
役所においても「印鑑証明書」というものが存在すると共に、役所への提出書類は非常に物理的なハンコを必要とするものが多いです。
(役所には、基本的に交渉事が通用しない。)
下記動画も参照ください。

FNNプライムオンライン「首相は“出勤7割減”を要請 “緊急事態宣言”各地で相次ぐ」

そのため、今現代の状況を踏まえて、改めてハンコを不要とする商文化に、国策として変えて欲しいという要望が各所であがっています。
ハンコを押すためだけに出社しなければならない、という状況が現実として存在しているのです。

やっぱり利益相反はダメだ

ところが、我が国のIT大臣は、14日の記者会見にて、リモートワークの妨げになっているハンコ文化について、下記のように発言しました。

「民・民の取引で支障になっているケースが多い」
「民間で話し合ってもらうしかない」
「役所との関係ではそういう問題は起きない」

朝日新聞デジタル IT相「しょせんは民間の話」 はんこのデジタル化 2020年4月14日

これに対して、ネット上では、怒りを通り越して完全に呆れた様子の反応が出ています。
上述の通り、実際、役所に提出する書類には多くの印鑑が必要ですし、各種の手続きで「印鑑証明書」を求められることも多々あります。
民・民で起きているからこそ、法令を含む社会制度全体で改善して欲しい、という要望も存在します。

さて、このIT大臣について、「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(はんこ議連)の会長を努めていることを、すでに多くの方がご存知でしょう。
このIT大臣は、2019年9月の就任会見にて、この兼任について問われた際、「(はんことデジタルが)共に栄えるためにはどうすればいいかということに知恵を絞っていきたい」と回答しています。

つまり、完全な、しかも国家レベルの利益相反の関係にあるのです。
IT大臣として、法令を含む社会制度全体でハンコ文化の改善が必要ですが、今このリモートワークが国や都から求められている状況でなお、利益相反の状態がある故に実行することができないのでしょう。
やはり、利益相反はダメです。
必要なはずのことが進まなくなります。

免責

なお、断片情報の所感故、上記14日記者会見について、全文情報が出たら、受け取り方が変わる可能性があることは留意ください。
加えて、私は別に政府批判をしたいわけでも無いことも留意ください。
同様に、関係各所の名誉棄損や営業妨害の意図も一切ございません。

IPOを目指すベンチャー企業は利益相反状態を排除しよう

上記の通り、利益相反は百害あって一利なしです。

会社の成長を妨げたり、業績面での実害をもたらしうる可能性があります。
IPO推進における、証券会社や東京証券取引所の審査で障害になります。
ガバナンスでヘッジをすることは可能ですが、そもそもとして、利益相反の状態を取り除けばヘッジが不要になります。

会社という物は、人間関係や感情などがどうしても渦巻くものです。
ですが、ミッション・ビジョンを見据えて考えた時に、本質でないものは徹底的に排除すべきでしょう。
繰り返しますが、やはり利益相反はダメです。

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