怖れる必要は無い、ジョブ型雇用を歓迎しよう

人事・総務

経団連の方針やリモートワークの拡大に伴い、ジョブ型雇用、というワードが話題になっています。
どちらかと言うと微妙にネガティブな印象で語られるジョブ型雇用ですが、実際の所どうなのでしょうか?
ここでは対比して語られるメンバーシップ型雇用と併せて考察していきます。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

ジョブ型雇用って?

まずはじめにジョブ型雇用とは?からはじめます。

ジョブ型雇用とは、欧米に多い雇用形態で、業務内容を明確に記述する「職務記述書(ジョブディスクリプション)」をベースに雇用する形態です。

①職務、②勤務地、③労働時間のいずれかが「限定」されている正社員であり、限定正社員、一部専門職、旧くは一般職と呼ばれている雇用の形態です。

一方、対比されるメンバーシップ型雇用とは、日本で一般的な雇用形態で、業務内容が不明確で、①職務、②勤務地、③労働時間のいずれも「無制限」です。
つまり、配置転換や異動などが企業側の都合で行われます。

表現のされ方としては、
ジョブ型雇用が「仕事に対して人を割り当てる(採用する)」とされるのに対し、
メンバーシップ型雇用は「人を採用してから仕事を割り当てる」と捉えることができます。

なお、これらの話は「雇用方法」の話です。

「評価方法」の話である、成果主義や年功主義、
「就業規則」や「労務管理」の話である、裁量労働、時間労働、
の話と混同
している方や、報道が多くて、微妙にカオスな状況になっています。

(リモートワークのジョブ型雇用で、年功主義での評価、監視システムを入れて時間労働、としても全く問題無い。機能するかどうかは別。)

とりあえず、本稿では「ジョブ型雇用」≒「成果主義」≒「裁量労働」的な前提で書きます。

(この構造が、どうしてそうなるのかは謎ですが、世の中一般がそういう構造で議論しているので則ります。)

スポンサーリンク

何が問題視(不安視)されているの?

語られている問題点

それでは、何を問題視(不安視)され、語られているのでしょうか?

いくつかの主張を整理するに、下記が問題のようです。

  • (無制限に職務を押し付ける形で)長時間労働になる
  • (職務未遂や職務基準未達を理由に)報酬/給料を下げられる
  • (職務が不要になった等を理由に)リストラされるリスクが増える
  • 昇進昇格のためには自主的に上の職務に見合うスキルアップが必要

労働者サイドにしてみれば、変化に対する、これらの不安が起きるのは当然と言えるでしょう。

(なお、長時間労働に関しては、減る、減らしやすい、という報道や議論の方が多いです。)

それでは、上記の問題(不安)について、如何に考えたらよいでしょうか?

多分だけれども、あまり問題無い

まず、日本には労働基準法というものが存在しており、現状、企業側にとって不利な法律が施行されています。

そのため、いきなり報酬/給料が下げられる、ということは基本出来ません。
いきなりやられたとしたら、何かしら法に抵触している可能性が高いので、ボイスレコーダーの準備など、労基署に提出できる情報集めをした方が良いでしょう。

リストラも同様です。
解雇規制があるので、いきなりの解雇は(まともな会社なら)あり得ません。

その他、長時間労働は、どちらかと言うと「減るよね」という意見の方が出ています。
(リモートワークで、仕事のやめ時がわからない、という声もあるにはありますが。)
スキルアップに関しても、多分、やりやすくなるはずです(後述します)。

もっと言うと、そもそもとして不安視する必要が無いのでは?と考えられます。

というのも、これまでの古き良き雇用は、終身雇用、年功序列、企業別組合、新卒一括採用で、学業を終えたら定年まで一貫して安定して生活できる状況が前提にありました。
が、今、上記で残っているのは新卒一括採用位です。
大企業が安心、というのも過去の話で(過去も安心だったのか謎ですが)、誰しもが知っている大企業でもあっさりと潰れたり、どこか別の会社に買収されたりする時代です。

つまり、心配せずとも、世の中は既に、心配するに値するだけ状況が悪くなっています。

そうならば、良い面にフォーカスをあてて考えた方が、人生はプラスに動くはずです。

スポンサーリンク

実は良いことばかりなのでは?

問題視(不安視)されている点を裏返すと?

私は、仮に日本がジョブ型雇用に移行したのならば、むしろ働く人たちにとって良いことばかりなのでは?と考えています。

まず、長時間労働が心配されている反対に、労働時間は減るであろう、という意見の方が多いです。
これは、無駄な残業同調圧力が無くなれば、すぐにでも労働時間が減るであろうことを実感している人が多いからでしょう。
やるべき事を終えたら、仕事を終えれば良いのですから、実力のある人にとっては間違いなくプラスですね。

報酬/給料面も、むしろ若い方にとってチャンスが増えると考えられます。
今の時代、知識やノウハウがお手軽に手に入る時代です。
本気で勉強すれば、これまではベテランしかできなかったような仕事を、多くの場面で誰しもができるようになっています(もちろん、習熟度の問題や、高専門性の仕事は別だが)。

リストラ懸念も実は心配がいらなくて、会社に必要とされる人材なら、リストラどころか、いてくれ、と懇願されます。
職務基準を満たしてさえいれば年齢関係無く働けるので、終身雇用が崩壊した時代にも対応ができます。

スキルアップも、より簡単になるはずです。
メンバーシップ型雇用で、経験するポジションが多様な職種だった場合、習熟度が中途半端になります。
これが、一つのジョブに固定されるのであれば、そのジョブに対する習熟度を集中・特化してあげられます。
ある程度お歳を召された状態で、全く新しい分野を勉強し直さないといけない、というのは大変なものですが、これから解放されます。
主な不安の対象である大企業の古株社員たちにとっても、良い話のはずです。

つまり、問題視(不安視)されている点を裏返して考えると、全てメリットになるのです。

と言うか案件

そもそも論なのですが、メンバーシップ型雇用であろうが、本質的には「達成すべき基準」が設定されていないといけないはずです。

最初の方で書きましたが、ジョブ型雇用もメンバーシップ型雇用も、「雇用方法」の話であり、「評価基準」の話では無いからです。

この点が曖昧になっているのが入り口として問題であり、役割に応じた評価基準が明確ならば、メンバーシップ型雇用だろうが、ジョブ型雇用であろうが関係がありません。
むしろ、達成すべき基準が明確ならば、多くの場合、やりやすいはずです。

(働く側にとって、基準に則って成果を出しているならば、会社側に「それは違う」というのを言いやすい。)

(これらのことから、本質的には、リモートワークの話と、ジョブ型雇用の話はリンクしないはず。)

ベンチャー企業(将来の大企業)を中心に、メンバーシップ型雇用であったとしても、事実上のジョブ型雇用は進んでいます。

(ジョブディスクリプションが無いだけで、実質的なジョブ型雇用、というパターンは多い。)

遅かれ早かれの問題なので、それならば、さっさとやった方が良いと考えます。

最後に付け加えると、世の中のパイはある程度決まっています。
配分方法が変わるだけの話なので、人材の需給バランスは必ずどこかで釣り合います。
有能な人が正当に評価される、必要な人が必要とされる、という方向に行くのであれば、それは歓迎すべきことと私は考えます。


上で「最後に」と言っている中での蛇足ですが、成果主義の導入があっさり失敗した過去etcを踏まえると、騒がれているほど導入は進まないと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました