リモートワークが普及し、フル・リモートの形態、ハイブリッド型の運用、様々な試みが各社でされています。
ここで疑問に思うのが、このリモートワーク時代、どれだけの人数の部下をマネジメントできるのであろうか?という点です。
スパン・オブ・コントロールの考え方を前提に、考察していきます。
スパン・オブ・コントロールとは
まず、スパン・オブ・コントロールについてです。
スパン・オブ・コントロールとは、「コントロールできる範囲」という意味で、一人の管理監督者、つまりマネージャーが、現実的にマネジメント可能な部下の人数を示した一つの考え方です。
そして、このスパン・オブ・コントロールの考え方においては、部下の人数は3人~5人、多くても7人~10人が限界だ、とされています。
なお、この考え方は諸説があると共に、そもそもとして科学的なものというよりかは経験則的なものとなっております。
そのため、業種業界や、上司や部下のマインド感・リテラシー水準等々により大きく変動することは指摘しておきます。
さて、この通り経験則であるとはいえ、マネージャーがマネジメント可能な部下の人数に限度があるために、組織階層というものが存在します。
例えば、スパン・オブ・コントロールを意識した伝統的な1-3-9モデルですと、下記のような組織構造となり、マネージャーの部下の人数は12人、直接の管理下にあるのは3人、となります。
理論的にはマネジメント可能な人数は増えるはず
上記、スパン・オブ・コントロールを前提に、リモートワーク時代のマネジメント可能な部下の人数について考えていきます。
まず言えることは、理論的にはマネジメント可能範囲は増えるはず、という事です。
伝統的なスパン・オブ・コントロールの考え方では、マネージャーが直接部下を見て、ヒアリング等し、また各種アナログなツールを使ってマネジメントを行うことが前提となっています。
しかし現代には、下記のようなチーム運営を補助する便利で安価なクラウドツールが多数存在します。
いわゆる、バーチャル・ワークサイトを簡単に構築できるわけですね。
- チャットツール,社内SNS(Slack、Chatwlokなど)
- カレンダー(Googleカレンダーなど)
- ドキュメント共有(Gsuite、Dropboxなど)
- プロジェクト管理(Trello、Backlogなど)
- オンライン会議(Zoom、Meetなど)
これらのツールを活用することにより、マネジメントの生産性は劇的に向上させることができ、
そのため、理論的には一人のマネージャーのマネジメント可能範囲は増えるはずなのです。
しかし、この考え方は、一つ見ていない点が存在します。
人はそんなに簡単に強くなれますか?
オフィスに出社してマネジメントをしている時は、部下の表情や顔色、ちょっとした言動を側で見聞きすることができるため、部下の異変にすぐ気が付くことが容易です。
声をかけて、雑談等を交えつつ、調子を確認することもできます。
部下の方も、何か困ったこと、わからないことがあれば、(比較的)気軽に声をかけ、質問をすることができます。
リモートワークでは、前提として一人での業務進行となるため、上記のことが気軽にはできなくなります。
(もちろん、Zoomを常時接続にしておく、とか、Slack等で雑談を活発にするとか、工夫はできるが。)
人の心や考え方は、そんなに簡単に強くはできません。
ある時気が付いたら、部下が仕事の悩みを蓄積させ、不満が爆発寸前だった、ということもあり得ます。
もしかしたら、適応障害やうつを必死で隠して、我慢しているかもしれません。
このような予兆を、リモートワークだと察知し辛いのは、否定できないでしょう。
(繰り返しますが、もちろん察知をしやすい環境を構築するよう、工夫はできます。)
私はリモートワーク時代では、会社や上司毎に、マネジメントの格差が拡がるのでは、と考えています。
ツールの導入状況や、会社の姿勢、上司の力量等々の要因により、
マネジメント可能範囲が劇的に広がる所も出てくれば、却って狭くなってしまうケースが出てくるように思います。
まとめますと、リモートワーク時代において、スパン・オブ・コントロールが広がるか狭くなるかは「わからない」になります。
ただ、課題は部下のケアに絞られることになります。
- 毎日、時間を決めてチーム・メンバー全員でショート・ミーティングをする(朝礼など)
- チャットツール上で雑談チャンネルを設定し、ものすごく下らない話題も歓迎する
- 困っていることリストや相談チャンネルを設定し、不明点を気軽に投稿できる場所を用意する
- 1on1の実施を定期的に行う
- 定期的に集まる日を設ける
こういった工夫を行うことにより、スパン・オブ・コントロールを広げられると考えられます。
(なお、雑談により産まれる偶然のアイデア創発なども、課題の一つです。これも、上記工夫により一定対応できる可能性があります。)
コメント