クラウド型の電子契約サービスはどこまで実務に使えるか?

人事・総務

筆者もクライアントにて電子契約導入のサポートを行い、諸々知見が蓄積されてきたので、ここで整理をします。
現実的にどこまで電子化できるか?の参考になるかと思います。

基本的なクラウド型の電子契約サービスの状況については次の記事を参考にしてください。

基本的に、法人実印に代わる電子証明書の取得を行えば、理論上は登記実務まで電子で完結できるようにはなりました。
要注意事項については、下記記事内にて解説しています。

押印そのものに関する基礎的部分に関しては次の記事を参考にしてください。

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通常の契約

まず、(相手先がいる)通常の契約締結に関しては、相手先がNGでなければクラウド型の電子契約サービスにての締結で問題がありません。

下記記事にて整理しているのですが、クラウド型の電子契約サービスを導入する上での課題は次の3つです。

  1. 契約の有効性
  2. セキュリティ
  3. 内部統制

この内、1.契約の有効性、2.セキュリティに関しては、法的な解釈整理やサービスが提供する仕様で解決が可能です(解決が可能と整理する)。

内部統制に関しては、代理権限の証明(無権代理のけん制)が必要です。

この代理権限の証明(無権代理のけん制)に関しては、次の2つの記事を参考にしてください。

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登記が関係しない取締役会議事録

登記が関係しない取締役会議事録に関しては、これもクラウド型の電子契約サービスにて対応が可能です。
(社内保管用なので、そこまで神経質にならなくても良い。)

この辺りの話は、下記の記事を参考にしてください。
クラウドサイン等の一部クラウド型の電子契約サービスが登記対応する前の記事なので、一部古い記載がありますが、基本的な考え方に関しては参考になるはずです。

なお、役員にクラウド型の電子契約サービス上で、押印回覧をするかと思いますが、この場合、必ず役員のメールアドレスを指定するようにしましょう。

社外取締役とかで秘書の方を指定している場合もありますが、この場合は必ず本人から承認する旨の文面をメールでもらうようにしましょう。

後で揉める可能性がゼロではありません。

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登記に関係する議事録(取締役会議事録、株主総会議事録)

登記に必要な書類に関しては、現実的に紙の方が便利なんだろうな、という考えです。

まず、そこまで登記が必要な場面が多くない事と、登記書類の電子化にはクラウドサイン等のクラウド型の電子契約サービスでは不足があり、法人実印に代わる電子証明書の取得が必要です。
加えて、押印に関係する登場人物の一人でも(取締役会議事録における社外役員が想定される)、電子NGとなった場合、一部だけ紙で、という対応が不可能な点もあります。

そのため、なんだかんだ、登記に必要な書類は紙の方が良いよね、諸々は司法書士先生にお願いするし、という結論になります。

電子証明書の取得自体は、そこまで難しく無いので、諸々社会全体で電子対応がこなれてくれば、状況は変わるでしょう。

(電子証明書を取得して運用していく事が、関係者含めて苦で無いのならば、電子の方が良いので、そこは悪しからず。)

投資契約のような複雑な契約

投資契約のような複雑な契約に関しては、使い分けが良いという結論です。

下記のような形で、例えば、登記に使う物なのか、払込に必要な物なのか、で整理するとわかりやすいでしょう。

登記に必要な書類 → 紙で準備

  • 定款
  • 株主一覧
  • 株主総会議事録(取締役会に委任していれば取締役会議事録)
  • (★)総数引受契約書
  • 取締役会議事録(投資契約の承認)
  • 資本金の計上に関する証明書
  • 種類株主への通知を証する書面(契約承認、取締役会に委任していれば募集事項の決定も)
  • 払込があったことの証明書
  • 委任状(司法書士先生に依頼する場合)

払込に必要な書類 → 電子でOK(ただし★は登記にも使うので紙で)

  • 株主総会議事録(種類株主総会分も必要があれば)
  • (★)総数引受契約書
  • 投資契約書(株式引受契約書、という名称の場合も)
  • 株主間契約書

種類株主への通知に関しては、簡素化方法がありますので、こちらの記事を参考にしてください。

なお、株主間契約書ですが、株主によっては電子契約NGの所もあります(銀行系VCとか)。

この場合、ハイブリッド型での契約締結が考えられます。

具体的には、押印箇所のみ当該株主から株主人数+会社分、作成・郵送してもらい、他の電子契約OKな株主の押印箇所に関してはクラウド型電子契約サービスの締結を証する画面の印刷を挟み込む形で(他の紙面部分と併せて)製本・割印するイメージです。

登場人物が多い場合、押印部分の収集が一番面倒ですので、これだけでもかなりの手間暇を省力化できるはずです。


以上、現在時点において、現実の実務でどこまでクラウド型電子契約サービスが使えるかを整理してきました。

まだまだ不便な所(システム的な所だけでなく、社会的な受容度の観点で)がありますが、従来の押印実務に比べれば非常に便利になってきています。

押印部分がリモートワーク等の妨げになるだけでなく、業務の非効率化を生んでいる部分もありますので、積極的に電子契約の導入を進めていきたいものです。

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