直感での判断は自信につながる~ただし留意点も~

ビジネスと心理学

「直感」には魅惑的な響きがあります。
自分自身の内側から出る考えは、まるで本当の自分自身を反映しているかのように感じます。
そして、それは心理学的には正しいことのようです。
ただし、直感は多くのエラーにつながりやすく留意点もあります。

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自分自身の直感に従うと自分らしくなる

近年の研究によると、熟考して出した結論より直感で出した判断の方が「本当の自分」を感じ、そしてそれは自信につながるようです。

https://www.apa.org/pubs/journals/releases/emo-emo0000490.pdf

つまり、直感は人の内面的な意味で本質的な働きである、という考えと関連しているようです。

科学的に「本当の自分」というものが存在するか否かは不明ですが、人がどのように感じるかを測定することは可能です。
研究者たちは4つの実験を通じて、「直感」と「本当の自分」との関連について調査を行いました。

1つ目の実験は消費財の購買実験です。

90名の被験者を対象に2台のDVDプレイヤーのとちらを購入するかを選択してもらいました。
そしてその際に、「直感で選ぶ」グループと、「熟考する」グループ、そして「指示なし」の対照グループの3グループに分けられました。
選択後、被験者には自分自身の決断がどれだけ「本当の自分」を反映しているかが尋ねられました。

その結果、「直感で選ぶ」グループは、「熟考する」グループそして対照群よりも「本当の自分」が反映されている、と回答したことが示されました。

2つ目の実験はマグカップを選ぶ実験です。

88名の被験者を対象に旅行用マグカップを白黒写真かカラー写真かで提示し、マグカップの材質や洗浄のしやすさなどの機能的な側面についての説明が行われました。

その結果、カラー写真で説明されたマグカップを選択した被験者の方が決断に「本当の自分」が反映されていると回答する傾向が強いことがわかりました。
(他にも、体験的に商品を説明された場合にも同様の結果が出た。)
つまり、ここではビジュアル感で思い切って選ぶか、機能を熟考して選ぶかが影響している、ということです。

3つ目の実験ではAirbnbでの部屋の選択です。

215名の被験者を対象に、Airbnbでどのアパートに宿泊するか、選択を行いました。

ここでは、直感グループも熟考グループも、「本当の自分」を感じるという結果が示されました。
この点について研究者は、特定のタイプの商品については、どのような選択の方法であっても「本当の自分」について語っているように感じるのでは、としています。
(確かに、Airbnbで部屋を選ぶ場合、写真が重要な判断要素なので、熟考したとしてもビジュアルで決断する側面が多いようには感じます。)

最後4つ目の実験では、レストランを選んだ上でそれを人に紹介するか、という実験です。

60人の被験者を対象に、食事をするレストランを選び、それをSNSで公開するか、また友人や家族に紹介するためのメールアドレスを研究者に提供するか、を尋ねました。

その結果、直感グループの方が、SNSで公開する割合もメールアドレスの提供数も増加することが示されました。

以上の実験から、人は直感で判断する方が「本当の自分」を感じ、そしてそれが自信につながる、ということが示唆されます。

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留意点もある~直感での判断はエラーが多い~

直感のポイント3つ

しかしこの話はあくまでも本人がどう感じるか?という話であり、現実世界での直感は多くのエラーを含みます。

こちらの記事ではノーベル賞受賞者である行動経済学者が直感での判断について解説を行っています。

Daniel Kahneman: Your Intuition Is Wrong, Unless These 3 Conditions Are Met
At the World Business Forum, Kahneman explained when people can trust their intuitive judgment and when they shouldn't.

直感は辞書的には「どのように知ったのかを知らずに知ること」と定義されているが、それが誤りである、と指摘しています。
何故ならば、直感は多くのエラーを含むからであり、正しくは「なぜそうするのかを知らずに知っていると考えること」と定義すべきだ、と。

その上で、直感が如何にエラー判断を下しやすいのかを説明した上で、正しい直感の使い方について説明しています。

そのポイントは3つです。

  1. 何らかの規則性があり、それを学習することができること
  2. 反復的に練習すること(経験を積んでいること)
  3. 正誤のフィードバックが即時に受けられること

規則性については、チェスを事例に説明がされています。
チェスでは法則性が確かにあり、ベテランが下した直感は信頼性が高いということです。

そしてそれを支えるのが2つ目のポイントである「経験」と3つ目のポイントである「即時のフィードバック」です。

この3つのポイントが満たされた時、優れた直観力を身につけられる、としています。

多様性がある事象や明確でない場合にも留意

また、上述の実験においても研究者は次の指摘をしています。

「経験の多様性が優先され、それほど明確に決まっていない物を検討する際には熟考する必要があります。」とし、例えば投資商品を選ぶ際には、直感ではなく熟考した方が良いとしています。


以上の知見から、直感は自分自身のマインドに自信を与えるものの、その使い方には十分な注意を払うべきだ、ということがわかります。

現実的に損害がない、もしくは少ない事象(例えば、ちょっとした消費財を購入する、とか1日限りの宿泊先を選ぶ、とか)については大いに直感に従えば良いでしょう。
(それは人生を豊かにするはずです。)

また、自分が専門としている、熟達した領域においても直感は有効なはずです。

ただし、それ以外の領域については、上述の知見を意識し、熟考を行う、という癖を身に着けておくのが良いのではないでしょうか。

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