なぜ外出自粛をしない高齢者に「若者はダメだ」と言われるのか?~素敵に年をとるために~

フェルミ推定・ロジカルシンキング

社会が不安に陥っている中、その不安が世代間のいがみあいに飛び火しています。
テレビをはじめとしたメディアは「若者が外出自粛をしない」と報道し、一方、データは「高齢者こそ外出自粛をしない」ことが明確に示されています。
この現象を、古今東西で言われている「最近の若者はダメだ」と絡めて解説すると共に、どうすれば素敵な尊敬される年の取り方ができるのか考えていきます。

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忙しい人向けまとめ

  • メディアでは外出自粛を行わない若者に対して批判する報道があふれている
  • 事実は、若者より高齢者の方が外出自粛を行わない行動をとっている
  • つまり、若者の方が模範的な行動をとっている
  • 高齢者には、自己評価が高いと他者評価が低くなる、という心理的な効果がある
  • さらに、記憶に対しても、自分たちに都合が良いようにバイアスがかかる
  • そうならないためには、心理的な効果があることを知る、事実を元に考える、視点を広くもつ、といった努力が必要
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ここ最近のメディアの報道

まず最初に、ここ最近のメディアの報道をピックアップします。

そのうえで「若い元気な方々がウイルスを持っているか全然わからないままに、ライブハウスなどの密閉した空間に、密集し、密接に寄り合うという3つの条件が重なると感染が広がる傾向がある」と述べ、特に若者に対し、不要不急の外出を控えるよう呼びかけました。

NHK 「特に若者は控えて」東京都 不要不急の外出自粛を呼びかけ(2020年3月28日)

テレビ離れをしている若者にとって新型コロナウイルスはどこか他人事のようだった。都立学校の多くは5月のゴールデンウイーク明けまで休校措置が延期となり、都内大学の多くも同様の対応だという。多くの若者が不要不急の外出を止める気配はない。

文春オンライン コロナもかまわず渋谷・原宿に溢れる若者たち「バイトがないから」「春休みが超長くて」「免疫あるし」(2020年4月3日)

都内の大学に通うハルカさん(20、仮名)はそう言って、「結局死なないし」と笑う。3月中、大学は春休みシーズンだ。友人同士でオールでカラオケをしたり、シーシャ(水タバコ)バーに集まることもよくあるという。「シーシャって一台を数人で共有しますし、モロ濃厚接触」だが、気にする人はいないそうだ。

ビジネスインサイダー コロナ危機に大学生からは「飽きた」。“自粛疲れ”若者との意識格差どう埋める?(2020年3月25日)

女優の本田翼が4日、自身のYouTubeチャンネル『ほんだのばいく』で「3分半、私に下さい。」というタイトルの動画をアップロードし、特に若者に向けて新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた声かけを行った。本田は「今なら空いているから行こうとか、そういう気持ちで外に出ているのを聞いてがくぜんとしました」と軽はずみな気持ちで外出している人々の状況に驚きの様子を見せた。

ハフィントンポスト 本田翼さん、外出する若者に「がくぜんとした」 新型コロナ感染拡大防止に向けて声かける(2020年4月5日)

加えて、巣鴨の商店街の様子をうつした報道では、70代の男性が次のように語っていました。
「若者だけ家にいてくれるとありがたいと思うよ。だって若者いなきゃ感染しないんだから。」

このように、若者が如何に外出自粛をしないか、最近の若者はダメだ、という論調で報道されています。

それでは、客観的な事実を次に示します。

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外出自粛をしないのは高齢者~これは事実です~

ここで示すデータは、東京都にて大規模な外出自粛が要請された3月27日~29日に行われたアンケート調査を集計したものです。
クロス・マーケティング社が行った調査で、2,500名の20歳~69歳の男女を対象にWeb上で行われました。

調査項目は、商業施設への買い物といった必要性の高い外出から、家族との外食、スポーツをする、といった不要不急性の高い項目に続き、友人付き合いからテーマパークや遊園地に行くまでの明らかに不要不急な8項目で調査が行われました。
次のグラフは、明らかに不要不急な外出8項目の年代別平均値になります。

クロス・マーケティングの調査よりMirizeRocketが作成

このグラフの通り、20代30代の若者と、それに加えて40代の中年層も明らかに外出を控えていることがわかります。
不要不急な外出を行った20代~40代は約14%です。

一方、不要不急な外出を行った50代は約20%、60代は約28%と、若者・中年層に比べて非常に多い数字が出ています。
特に、高齢男性が外出自粛を行わない傾向があり、加えて60代になると男女関係なく外出自粛をしない傾向が出ています。
その数、60代の約3人に1人が不要不急の外出をしているのです。

それでは、数字としては明らかに若者の方が高齢層より、外出自粛を行う模範的行動を行っているにも関わらず、「最近の若者はダメだ」と言われてしまうのでしょうか?

なぜ、「最近の若者はダメだ」と言われるのか?

免責~高齢層批判やメディア批判をしたいわけではない~

ここでは、別に世代間闘争をあおりたいわけでも、高齢層を批判したいわけでも無いことはご承知おきください。
あくまでも、「なぜ、このような現象が発生してしまうのか?」を知り、その理由・原因を自分自身のあり方に反映させ、自分自身の人生をより良くしていくことを目的としています。
客観的な事実から、どうしてもメディアや高齢層に対する批判的論調になりやすくなってしまうのは致し方ないのですが、それは決して主旨ではありません。

加えて、テレビや雑誌のようなメディアの購買層は主に高齢層に偏るため、どうしても顧客の意向を汲んだものにならざるを得ないのは、商業的にそうなので、それも致し方ないと考えています。
ですので、「なぜ、このような現象が発生してしまうのか?」に対する解として、メディアのあり方に言及することも行いません。
あえて一点だけ触れると、メディアのあり方を踏まえて、しっかりと情報リテラシーを高めて、自己防衛をしていこう、という点だけです。

若者は高齢層よりモラルが高い

まず、事実の再確認ですが、上述の通り若者は高齢層よりも外出自粛を行う、といった、都の要請に対して従順で、かつ模範的な行動をとっています。

若者が高齢層よりモラルが高く、模範的な行動をとるのは日本の若者に限らず海外でも同様です。
今回の騒動とは別の調査にはなりますが、アメリカで行われた1万人以上を対象とした大規模調査では、性行動や飲酒・喫煙、非行行為などが、昔の若者より、今の若者の方が明らかに少ない、という調査結果が出ています。

これは、非行性の高い行為に限らず、読書のような模範的行為も同様です。
最近の若者は本を読まない、活字を読めない、と良く批判されますが、調査結果からは、30歳未満の若者は中高年層よりも本を読んでいることが示されています。

明らかに今現代の若者は、非行性の高い行動をとらず、模範的行動をとっているのです。
つまり、若者のモラルは高いのです。

高齢者には若者をダメだと思う心理的効果がある

カリフォルニア大学の調査が非常に興味深いです。
調査の結果から、「自己評価の高さ」が「若者評価の低さ」につながっていることが示されました。

のべ約4,000人の高齢者に対して行われた実験で、まず「自己評価」が行われました。
その後、「若者に対する評価」を行う、というものです。
この結果、「自己評価の高い」高齢者は、若者に対して低い評価を行っていました。

また、「読書を楽しんでいた」という高齢者は、「若者は本を読まない」と評価する傾向が強く、加えて「自分たちの世代はみんな本を読んでいた」と認識する(記憶している)傾向が極めて強いことが示されました。
つまり、記憶に対して明らかに誤ったバイアスがかかっているのです。

また、IQテストを絡めた調査も行われました。
IQテストでは、その結果は無視され、被験者にランダムでスコアが提示されました。
その結果、ランダムで「低い結果」が出た高齢者は、若者を低く評価しない傾向が出ており、逆に実際のスコアに関係なくランダムで「高い結果」が出た高齢者は、若者を低く評価する傾向が出ていました。

つまり、自己評価が高いと他者評価が低くなる、という心理的な効果があるのです。
さらにその心理的な効果には、記憶に対するバイアスも加わってしまうのです。

若い人たちが知るべきこと

私は幸いにも、素敵で尊敬できる高齢者の知り合いが多くいます。
若者を尊重し、あくまでも実力や実績を元に正当に評価するような方々です。
(それ以上に、そうでない高齢者も多く見てきましたが。)

この方々には、(全くゼロではないでしょうが)上述のような心理的な効果が見られません。
つまり、自分自身の努力により、心理的効果から身を守り、バイアスに縛られないことが可能になるはずなのです。

そのために必要なこととして、まずは自己評価が高いと他者評価が低くなる、さらに記憶に対してもバイアスがかかる、という事実を知りましょう。
事実を知っていれば、望ましくない行動を自分自身がとってしまった時に、反省をすることができる(はず)です。

また、常に事実をベースに考えることが重要でしょう。
客観的な事実をもって考えれば、そうそう判断を間違えることはないはずです。
現実に、事実ベース(ファクトベースとも言う)で行動できていない人が多く、世の中で混乱が起きています。
そのような行動を自分自身がとらないようにするために、事実ベースでの思考を身につけましょう。

視点を広く持つ事も重要です。
視座を高く持つだけだと、低い立場の人たちを見下しがちです。
立場や視点が、人によって全く異なる、ということを常に認識していれば、視座や立場の高低で人を判断しないはずです。

人は必ず年をとります。
そうであるならば、素敵で尊敬される老人になりたいものです。
努力でそうなれるならば、努力をするしかないでしょう。

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